メタボリック・シンドローム 2型糖尿病予防薬

近年、さまざまな研究により2型糖尿病の予防に、何と高血圧や高脂血症の薬が有効である。という論文にての発表がいろいろ出てきました。
これらの薬で2型糖尿病の発症を抑えられるのであれば、ちょっと注目です。

機械化の進歩で肉体労働が減って、さらに食生活が豊かになったおかげで、そのしっぺ返し世界中どこの国でも糖尿病予備軍がどんどん増えつづけます。

3年ほど前のデータですが、世界中の糖尿病患者の推定人口は1億8千万人、日本では700万人とのことです。(予備軍の人口ではありません。糖尿病と診断された患者推定人口です)

すっかり定着し話題になっているメタボリック・シンドロームは病名ではないのですが、これは太っていて高血圧気味、空腹時血糖値も糖尿病とは言えないまでも高く(予備軍)、少しずつ悪い人が容易に心臓や脳の障害を起こしやすいという警告の意味ですが、このレベルから糖尿病に進む人も多いのも実情です。

では糖尿病予防薬はいろいろありますが、節食と運動(エクササイズ)が糖尿病を予防する、あるいは糖尿病の発症を遅らせるということは、これまで数々の糖尿病の研究で明らかにされています。
ところが食事と運動という生活習慣の改善は、分かってはいるけど、やめられないのが現実なのです。

これらの研究では生活習慣の改善と共に薬の効果も検証されてきました。そのなかでも、「メトフォルミン」は肝臓のインスリン感受性を高めて、肝臓からのブドウ糖の放出を抑えると考えられていますが、欧米人のような肥満型の糖尿病予備軍にはとても効果がありました。

同様にインスリンがうまく作用しない人のための「インスリン抵抗性改善薬」も、人によっては予防効果があることも分かりました。某製薬会社の「アクトス」という商品はこの薬の代表的なものです。
また、食後の炭水化物(ブドウ糖)の吸収をゆっくりとさせる「アルファ=グルコシダーゼ阻害剤」も糖尿病予防に有効とされています。
食後の高血糖を抑えるのですから当然ですが。このタイプの薬には某製薬会社の「ベイスン」という商品が日本ではよく使われているようです。

血圧降下剤の効果はというと、何とも興味深いことは、高血圧の降下剤であるACE阻害剤やARB(アンジオテンシン受容体ブロッカー)という薬も糖尿病予防に効果があるようなのです。
これらの降下剤は糖尿病患者の高血圧症に使うと糖尿病性腎症の予防になるのです。
今後は、どのような機序(システム)で糖尿病予防になるのか解明できれば、新しい糖尿病予防薬の開発につながります。
またLDL(悪玉コレステロール)を下げ、HDL(善玉コレステロール)を増やす「スタチン」という高脂血症の薬も糖尿病予防になるようです。

ただしここで問題なのは、これらの薬を糖尿病予防に使うことが、現段階では健康保険が認られていないということです。
したがって今は使用することができませんが、今後十分検証がなされ、機序が解明され早く使用できるようにしてもらいたいものです。