メタボリック・シンドローム 糖尿病とアルツハイマーの関係

これまで糖尿病の方がアルツハイマー病や他の認知症(痴呆)になりやすいことは研究者の間では詳しく解明されてはいなかったものの、知られていました。
血管系の認知症なら分かりますが、今回アルツハイマーとの関連にも進展が見られそうです。

炭水化物(ブドウ糖)の代謝がうまく出来ないだけで辛い生活を送っているのに、さらにアルツハイマー病のリスクが高いとなると何とも追い打ちをかけられたようで、気が滅入ってきそうです。

こんな話題には触れたくない気持ちなのですが、実はこれがアメリカのジョスリン糖尿病センターからの情報となるとそうもいかないようです。
これまでよく分からなかった糖尿病とアルツハイマー病の関連がインスリン抵抗性にありそうだという研究が発表されたのです。

インスリンが正常に作用しないので(抵抗性、インスリンレジスタンスともいう)大量のインスリンが分泌されたり、血糖値が高くなることがあります。
特に白人系はすい臓の機能が強いと言われますので、肥満から2型糖尿病に進行する病因の大きな理由はこのインスリン抵抗性にあると考えられています。

肥満がもたらす代謝性シンドローム(シンドロームXとも呼ばれていた)はアメリカ成人の約1/4に見られますが、その引き金もインスリン抵抗性にあるのはどうやら間違いないようです。

この代謝性シンドロームとは1960年代から70年代に心臓疾患のリスクとして注目され始めて、1988年にアメリカのスタンフォード大学のジェラルド リーベンという教授がインスリン抵抗性によるものとして、シンドロームXとして発表したものです。
ウエストラインが大きくて血圧も血糖も血中の中性脂肪も高めですが、病名がつくほどではない。
しかし、複数の因子が重なると心臓疾患が危険レベルに高まってしまうというものです。

インスリンをキャッチするインスリン受容体はほとんどの体細胞に備わっていますので、脳細胞も例外ではありません。
脳の細胞がエネルギー源のブドウ糖を取り込むにはインスリンは必要ありませんが、インスリンが脳細胞に作用しないとアルツハイマー病やパーキンソン病と同じようなことが起きることがわかりました。

この研究者達は脳細胞(ニューロン)にインスリン受容体を持たない、いわゆるノックアウトマウス(NIRKO)を使った実験で得た結果です。
以前からこの遺伝子操作をしたマウスで、食欲コントロールの異常、肥満、2型糖尿病、不妊などになることが明らかになっていました。

今回はこのマウスの行動や記憶、脳の生理状態などが詳しく調べられました。
神経細胞のインスリン伝達タンパク質の活性が落ちると、GSK3ベータという酵素の活性が高まって、タウタンパク質のリン酸化が過剰になるのだそうです。
これがアルツハイマー病とインスリン抵抗性のカギになる可能性があるようです。

何だか難しい話ですが、さらに今後、研究が進むことに期待しますが、インスリン抵抗性改善薬はすでに身近にありますから期待してもいいのではないでしょうか。