メタボリック・シンドローム 糖尿病の食事療法

糖尿病治療の基本は食事療法と言われています。
これは効果が最もある治療法ですから甘く見てはいけません。
しかし、今まで散々好きなように食事を楽しんできたことを考えると、とてもではありませんが改めて「これが正しい食事の仕方ですよ」と言われても、そのギャップに驚くことは目に見えています。
特に尿糖(エネルギー)が出ていた人は知らないうちに大食い(過食)の食習慣がついていますので、初めのうちはとてもお腹が空きますが、治療によって血糖が下がれば食欲も収まります。
つまり、それが食習慣となります。

それでは何のために食事療法を行うのかを考えて、理解してみましょう。

1.インスリン量に見合う量の炭水化物(糖質)を摂取する。
できるだけ正常に近い血糖値を保つためには、からだが分泌できる量のインスリン(あるいはインスリン注射)とバランスのとれた量の食物(特に炭水化物)を摂取することが必要です。

2.合併症の予防のためのヘルシー食
合併症を予防するために、高血圧や血中の脂質異常(ここでは高脂血症)にならないようなヘルシー食を心掛けることが必要です。

3.適正なエネルギーを得るためのカロリー計算
成人の場合は、その人にとっての適正な体重を実現・維持するための適正なカロリー計算とその順守。子どもや青少年では正常なからだの成長を目指すために。妊娠中や授乳期では増大するエネルギーや栄養素の過不足がないように。

4.低血糖を防ぐ血糖値の調整
インスリン療法で起りがちな低血糖(度が過ぎると意識障害が起こるため危険)や、運動が血糖に与える影響への対策。

5.健康な体を保つ栄養バランス
健康な体を保つために、ベストな栄養素が摂取できるように調整。

日本では食品交換表を使った食事指導が主になり、少しずつ個人に合った食事計画がされるようになってきました。
食品交換表とは食品を栄養素に準じて6群に分けて、同じグループ内のものは自由に交換できるように配したものです。
それぞれの80kcalあたりの1ユニットを決めてあって、朝昼晩3回の食事にバランスよく配分すると必要なエネルギーと栄養素が摂れるようになっています。

食品交換表のいいところは、栄養学の心得がない人でも指示を守れば適切なカロリーと栄養素をバランスよく摂れることです。

その代わり、覚える種類が食品の数だけありますから使い勝手が悪く、自由に何でも食べられるという交換表の趣旨に反して個人の好き嫌いによりワンパターンの食事になりがちです。
ここは気持ちを切り替える工夫が大切ですね。

食品交換表のような食事が嫌いな人や外食の多い人は、血糖の源となる炭水化物食品のみに焦点を当てて食べ過ぎないようにするカーブカウンティング(カーブ(カーボ)とは炭水化物の英語Carbohydrateの略で、食品成分のカーブだけをカウントする食事プラン)が便利です。
これは砂糖類と共に穀類、野菜、果物、牛乳の食品群のみが炭水化物食品なので、これらを優先的に選択すれば血糖上昇を抑えられるためです。

欠点としてはカロリー(エネルギー)が二義的になりますから、肥満のある人は脂質にも考慮する必要があります。

糖尿病になっても食べてはいけない食物などありません。
何でも食べられるのですが治療食ですから節度は必要です。
一般に言われるような低カロリー食が糖尿病食ではありません。まず第一に心掛けるのは「ヘルシー食」なのです。