メタボリック・シンドローム 糖尿病の運動療法

糖尿病運動療法は食事療法と共に糖尿病治療の中心となります。その効果は明確で、絶大です。

運動では様々なメリットが得られます。
1.血糖コントロールを改善することができる
2.食事療法と組み合わせて、減量やヘルシー体重が維持できる
3.脂質代謝を改善して動脈硬化を抑え、心疾患のリスクを減らすことができる
4.血圧を下げることができる
5.インスリンが効率よく作用するため、インスリンや経口薬を減らせることができる
6.筋肉を鍛えることにより体力が向上し、体のしなやかさやバランス感覚を養える
7.ストレス解消、気分転換ができる

ただし、運動を始める前には医療スタッフに相談(メディカルチェック)が必要です。
それは2型糖尿病と診断されたときが病気の始まりではないからです。
実際の発病は、診断よりも10年以上も前に起こっていた可能性が高く、診断時には既に合併症のある人が2割はいる可能性があります。

そのため、急に思い立ってジョギングなどを始めるのはとても危険です。目、腎臓や心臓、足の神経障害などのメディカルチェックを受けてから、自分に合った運動のアドバイスをもらい、ご自身の体の状態を正しく理解することが第一です。

運動時に注意するべきこと、効果的な運動のポイント
1.自分の好みに合ったものを選ぶ
長続きしなければ効果がないばかりか、逆にストレスとなります。ジョキングや筋トレなどマイペースで行う好きな人もいれば、ゴルフや野球、テニス、のような友達と一緒が好きな方もいると思います。
いずれにしてもスポーツを楽しみ体を動かすことが前提となりますので、それぞれ個人が楽しめることを続けるようにしましょう。ただし、団体で行うスポーツは人と友達になれる絶好の機会でもあるので、効果的でもあります。

2.運動前後の体操が大切
いきなり体を動かすことは大きな負担となります。運動前のウォームアップ(徐々に体を温める)と、終った後のクールダウン(疲れを残さないためのストレッチ)を心掛けましょう。安全第一です。

3.効果的な運動を組み合わせる
有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせることで、本来の体バランスが得られ効果的です。

4.継続的に行う習慣をつける
運動の効果は2日位しか続かないので、継続的に行うこことが大切です。少なくとも30分程度の運動を週3回はするようにしましょう。

5.安心して暴飲暴食をしないよう注意する
たとえ運動をしたとしても、基礎代謝が衰えることにより運動で消費するエネルギーはそれほど大きくありません。安心しすぎて、暴飲、紡織に気をつけましょう。

6.低血糖の対策を行う
インスリン治療をしている人は逆に低血糖の対策を十分にしましょう。運動時間にもよりますが、効果は10時間以上続くので、注意が必要です。(低血糖発作は意識障害が起こりますので危険です。)

7.悪天候では無理をしないようにする
悪天候、猛暑、厳寒の日に体に負荷をかけすぎるのは体調を崩し危険です。運動を継続しようとする意識があまり強すぎて自分に厳しくならないよう無理はしないようにしましょう。

8.こまめに水分補給を行う
脱水に注意して適度な水分補給を行いましょう。水分補給は点滴のような少しづつ時間を掛けてが理想です。のどが渇いたと思った時点で黄色信号だと思いましょう。
運動中に動悸や不整脈、胸の痛み、めまい、筋肉や関節の痛みを感じたら我慢しないで中止しましょう。

9.自分に合った格好を心がける
足に合った靴、適切な服装など、体をしっかりと守り、いたわる用意を忘れずにしましょう。(スポーツショップなどで相談し、服装を選ぶ)

10.足のチェックを行う
むくみ、張り、痛みなど、足のチェックは毎日行うましょう。特にスポーツの後はストレッチと共に念入りにするべきです。

11.高血糖や低血糖の場合は運動を避ける
1型糖尿病の方は必ず血糖をチェックしましょう。スポーツを折り込んだ食事とインスリンのバランスを会得することが大切です。

12.運動の強度を知る
運動の強度は次の計算式で求められる心拍数を目安にしましょう
(<220-年齢>-安静時心拍数)×0.6+安静時心拍数。たとえば、50歳で安静時心拍数を70回/分とすると(<220-50>-70)×0.6+70=130回/分

運動の最初のうちは0.6ではなく、0.5を掛ける程度で始めるといいでしょう。この場合の心拍数は120/分になります。

13.医師の指示を仰ぐ
糖尿病患者はそれぞれ程度により運動療法が制限されたり、禁止されたりすることがあります。
例:
血糖コントロールが極端に悪い。
増殖網膜症による新しい眼底出血がある。腎不全の状態である。
心疾患、心肺機能に障害がある。
足の壊疽。
高度の糖尿病自律神経障害がある。 等々。

とにかく気になることがあれば医師に意見を求めるようにしましょう。
正しく効果的な運動習慣は、食事療法とともに、糖尿病治療に効果的な結果をもたらしてくれるはずです。