メタボリック・シンドローム 肥満と糖尿病とヘモグロビンA1C

糖尿病とヘモグロビンA1Cについて
糖尿病は血液中のブドウ糖の処理がうまくできない病気です。病院での検査はこのブドウ糖の2種類をしています。
1つは、その時点でのブドウ糖の量(血糖値)の測定です。朝食の時間が分かれば食後2時間値なのか、食前値なのかが分かります。

もう1つがヘモグロビンA1C(エー・ワン・シー)と呼ばれるものです。これは体中に酸素を運ぶ「赤血球」にくっついてしまっているブドウ糖の量を測定したものです。これにより過去2~3ヵ月の平均血糖値が表われてしまうのです。
つまり前日や数日前から運動や食事制限をしても過去の不摂生は分かってしまうのです。

ブドウ糖は自然界に一番多くある炭水化物で、最も安全なものですが、いろいろなものにくっついてしまう性質がありこれが厄介なのです。
ブドウ糖同士で結合すればデンプンになったり、セルロース(繊維素)になったりします。

血液中にブドウ糖がたくさんある状態、つまり高血糖になると、赤血球に含まれるタンパク質、すなわちヘモグロビンにもベタベタとくっつきます。
ブドウ糖が多ければ多いほど、それに比例してくっつきます。したがって以前の平均血糖値が分かるのです。

体内での赤血球の寿命は約120日です。赤血球は骨髄で作られて、120日ほどで古くなって脾臓(ひぞう)で処理(壊される)されます。しかも毎秒500万個の赤血球が壊されていますから、ホントにどんどん入れ替わっているのです。
120日より前の赤血球は体の中にありませんから、ヘモグロビンA1Cは過去2~3ヶ月の平均血糖値を表わすことになるのです。
自分でA1Cを測定できる装置もあるそうですが、病院で測定するのが通常です。

では、なぜヘモグロビンA1Cが重要なのかというと、ブドウ糖は身体を動かすのに大切なエネルギー源です。最後には水と二酸化炭素になるだけですので、とてもエコロジーでパワーのあるエネルギーです。
脳がこのブドウ糖をたくさん使う臓器だということはあまりにも有名です。
糖尿病ではない人の血液中のブドウ糖は、いつも正しいレベルに調整されています。

糖尿病の人はこの調整機能が壊れています。
血糖値がいつまでも高すぎると、目や腎臓、神経がダメージを受け、歯周病なども併発してしまいます。これが「合併症」といわれるものです。
最近は心臓や脳などの太い血管も高血糖の影響を受けることが分かってきました。

血糖、すなわち血液中のブドウ糖は2通りのルートから血液に入ります。
1つは食事に含まれる炭水化物がブドウ糖まで分解されて体に吸収されます。そしてもう1つは肝臓がブドウ糖を新しく作ったり、貯えていたものを放出してできるルートです。
糖尿病の治療では、この血糖をなるべく正常値に近づけることが大切になります。食事の炭水化物を制限したり、運動で消費させたり、必要があれば経口剤やインスリン注射をするのです。

ヘモグロビンA1Cが重要なのは、医師にとっての患者さんに対しての治療法が有効かどうかを判断する材料となりますので、決して患者を責めたりするために調べているのではありませんので、念のため。

もしA1Cが高いのなら何かを改善しなくてはなりません。単に血糖測定器が狂っているのかも…と思うのも良くありませんが、自分の意志が弱いから、なんて責める必要もまったくありません。治療が正しければそんなに無理をしなくても血糖はコントロールできるものです。

A1Cは4%~5.9%が正常値です。日本ではA1Cを6.5%以下にするように指導されていますが、特に徹底されているわけではないようです。アメリカなどでは、目標値を6%未満という時代になってきたようですが・・。なぜなら、どこまでA1Cを下げれば合併症を起さなくなるかという基準が確率化されていないためです。
そのため、できるだけ正常値を目指すという方法が取られているのです。